雑踏展

  • 堀内 昭宏
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  • Takumi MISHINA
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  • 《ストーブ》 2017 年╱ 630mm × 480mm╱ 紙、クレヨン

  • 《ぞう》 2025 年╱ 501mm × 652mm╱ 紙、クレヨン

  • 《夜の富士山》 2024 年╱ 501mm × 650mm╱ 紙、クレヨン

かきことば。

壁に掛けられたそれらに漂う、心をほっと解くような温かさ。富士河口湖町に暮らす堀内昭宏さん。彼は生まれつきの脳性麻痺により言葉を話すことはできませんが、今日もクレヨンを手に、色と線で想いを伝えています。

絵を描くことが日常になったのは、特別支援学校に通っていた頃のこと。美術の先生に勧められて絵画コンクールへ出品した作品が入賞したのがきっかけでした。それ以来、絵は欠かすことのできない生活の一部に。今では週に5 日福祉作業所に通いながら、金曜の夜は絵画教室で絵を描いています。

両親とともに思い出を振り返る昭宏さん。特にプロ野球観戦へ行くのが好きなのだとか

「何かひとつでいいから趣味を持たせたかったんです」。そう話す母・里美さんは、制作中の彼の心には立ち入らず、いつもそっと見守ります。「絵の時間は、彼だけの世界なんです」。母のまなざしには、昭宏さんの想いを感じ取る深い理解と愛情がありました。

時折見せる周囲の人を気遣うかのような笑顔も、温和で優しい彼の人柄を物語っていた

絵画教室の上條暁隆先生も、彼の想いに寄り添うひとり。「彼の中にはもう完成図があるんです。だから教えるというより、静かに見守っています」。しんと静まり返る教室の中には、迷いのない線が、ゆっくり、絶えずに描かれる音だけが響きます。その背中に誰も口を挟むことはできません。最近では、町のレストランや病院、役場などにも作品が展示されるようになりました。絵を目にした人たちが、思わず立ち止まり、表情をやわらげていく。そんな光景が日常の中に広がっています。

昭宏さんを見守る絵画教室の上條先生。色使いなど年々表現が広がっているのだという

いつも穏やかな笑顔を浮かべている昭宏さん。けれど、その笑顔にも揺らぎがある。嬉しさ、はにかみ、照れくささ、ふとした戸惑い、小さな怒り…。言葉はなくとも、そこには確かな感情があります。時折見せる、何かを伝えたそうに、そっと母の腕へ手を伸ばす仕草。そんなとき母は、言葉ではなく、わずかな触れ方の違いからその気持ちをそっと汲み取るのです。

教室が終わる頃には里美さんがお迎えに。母の献身的な支えがあって、彼の笑顔がある

「障害を隠さず、ちゃんと見てもらいたい。それが本人のためでもあるし、社会にとっても大切なことだと思うんです」

日本各地へ出かけた旅も、親しい人を招いて催した成人式も、それら全てが昭宏さんを孤独にせず、多くの人や経験に接する機会を持たせたいという家族の願いでした。これまで触れてきた景色や思い出や愛情が、彩り豊かな優しい彼の絵には表れているのでしょう。

自宅を彩る作品の数々。数年前に画集も作られており、次作に向けても意欲的なのだそう

絵も、笑顔も、仕草も、すべてが彼なりの言葉。それを見つめ、受け止め、そっと寄り添う親子の日々がそこにありました。言葉だけではない対話のかたちを、彼らは私たちに教えてくれているのかもしれません。

PROFILE PROFILE

堀内 昭宏ほりうち・あきひろ

  • 1977年生まれ
  • 山梨県在住

昭宏さんは笑顔が印象的で、常にアトリエの空気を明るくしてくれる。かれこれ10年ほどの間、毎週アトリエに通い、じっくり集中して制作をする。アトリエへの送迎は昭宏さんのお母さんで、二人の掛け合いも毎度楽しい。お母さんの素晴らしいバックアップがあってこそ、昭宏さんの創作が成り立っていることも忘れてはならない。オイルパステルを丹念に塗り重ねて描いた画面は、豊かな色彩に溢れている。明るい性格がそのまま表れているかのようだ。題材は、自身の身近な物や写真である。それらを見ながら描いていく。一見すると無造作に感じる色の配置だが、実はよく観察したものであることが見て取れる。先入観のない眼差しで観察して、対象の色の変化を捉えている。はたまた、画面を構成するかのように、自在な色彩で絵をまとめあげていくのは見事だ。日頃、お母さんと一緒に見た景色や事物、経験してきたことが、昭宏さんの豊かな感性を培っていることは、言うまでもないだろう。(絵画・造形教室アトリエさくら 上條暁隆)

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