2024.10.11_mine
朝の光が頬や鼻先を照らす。開けっぱなしのCDケース、机の上のマウスコード、部屋の隅で絡まる憂鬱や焦りを静かに暴いていく。瞼を開くほんの刹那に見える光。まだ色になる手前の何か、まだ形ではない輪郭のような。生まれたばかりの質感がまつ毛の隙間からぼんやりと差し込んでくる。また今日の自分がはじまっていく。
カメラを初めて手にしたのは高校生の時。元々スマホで写真を撮るのが好きで、ごく自然と父親の一眼レフで日常を覗き見るようになった。何気ない見慣れた風景が、さりげない光やフラッシュの加減で、まるで映画のワンシーンのように非現実的な世界に見える。次第に強くこだわるようになっていったのは、ふとした時に全く違ったものに見えてしまう、刹那の質感をとらえること。
幼い頃からこだわりが強い性格だった。しっくり来ない、納得がいかないことを数え出したら、本当に“きりがなかった”。自分で縛った縄で苦しくなる。ただ折り合いがつかない日々を生きながらも、写真だけは撮り続けていた。そんなある時、ずっと付き合ってきた自身の性質に、自閉症スペクトラムという名前が与えられた。通院し始めてから9年、ちょうど就職を控えていた時のこと。自分が9年もの間それを知らずに生きていた理由。それは、本人が自分というものを理解し、受け止められる年齢になってから伝えようという、父母の想いだった。でも不思議と力が抜けていくような感覚があった。自分というものの色や形がくっきりと見えてくる。それからより写真を撮ることに没頭していった。シチュエーションや角度、時間によって表情を変える光をとらえることに。それはまるで、日常の中で揺れ動く自分の心をとらえるようだった。
「障害を持っているからこそ自分の作品が生まれた。生きているのが楽しくなったんです」
控えめでいて、芯のある瞳を向けてka
naさんは笑う。彼女のこだわりは日を追うごとストイックさと複雑さを色濃くし、作品数も増え続けた。その反面、作品へ向き合っていくほどに周囲の人や自分自身に優しくなれるようになったと、少し照れながら彼女はまた笑うのだった。
最後に
____ka naさんにとって、アートとはなんですか?
「“きりがない”もの…です。それは、自分が生きている限り生まれ続けるものだと思うから」