雑踏展

  • 東本 憲子
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  • Noriko HIGASHIMOTO
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  • 《無題》 2011 〜2018年╱1215mm×25420mm╱インク、エアキャップ

  • 《無題》 2011 〜2018年╱1215mm×25420mm╱インク、エアキャップ

  • 《無題》 2009 〜2010年╱902mm×902mm╱インク、エアキャップ

ひびのあわ

大阪府東淀川区にある『西淡路希望の家』を訪れた日、近隣のホールでは設立40周年を記念する展示が設けられ、個性豊かな作品が並んでいました。中でも無二の存在感を放っていたのが、ステージの上にふわりと垂れ下げられた“エアキャップ”。無数の粒が鮮やかに彩られたそれは、照明の明かりをやさしく纏い、温かな光を放っているかのようでした。

「うっかり画材を忘れてしまった時があって、たまたまあったエアキャップを憲子さんに渡したら、ひとりでに色を塗り始めたんですよね」

細かいエアキャップに色を置いていく憲子さん。作品の完成までに数年間を要することも

笑いながら制作の裏話を語ってくれたのが、美術部支援員の金武啓子さん。そして得意気な表情でアニメポーズを決める彼女が、東本憲子さんです。

「あくまでも指導はしない」と話す金武さんは、時折彼女の側に寄り添いながら様子を見守る

憲子さんが参加する美術部が行われるのは月に3回、仕事を終えたあとの自由な時間。彼女は日中「クリエイト班」のメンバーとして、黙々と刺繍などの制作に取り組んでいました。施設では長年にわたり、利用者が働くことができて報酬を得ることに向き合ってきた歴史があり、制作物は専門スタッフによってプロダクト化され、ネット通販やイベントなどを通じて届けられています。働いて得たお金を自分のために使う。ここでは、そんな普通の営みが丁寧に育まれてきました。

「美術部では画材の提供と見守りのみ。エアキャップもあくまで憲子さん主体の作品で、彼女が描きたいものを尊重していますね」

日中は仕事として制作を行うのがルーティーン。刺繍作業にも彼女独自の美的感覚が表れる

時折振り返って笑う彼女に、やさしく応える金武さん。仕事の時とはまた少し違う穏やかな表情を浮かべながら、憲子さんはエアキャップに色を置いていきます。描かれるものは一見無秩序で抽象的にも見えますが、よく見るとお花や大好きなアニメキャラクターが隠れていることも。ご家族からも深い愛情を注がれているそうで、お父さんのキャンピングカーで出かけた思い出や、ここで過ごす充実した日々の一つひとつが、温かな色彩やテクスチャに表れているのかもしれません。

利用者たちが制作した素材は、専門のスタッフによってプロダクトへ仕上げられていく

「すごいアーティストとは思ってほしくなくて…。憲子さんの生活も仕事も私たちと同じ社会の中にあって、そうした暮らしのなかから自然と表現が生まれてるんですよね。職員は日々支援の在り方に葛藤しながら向き合っていますけど、こうした作品を見ると、少しは過ごしやすい環境を整えられてるんかなって、救われる気がします」

彩られたエアキャップの粒は、憲子さんが過ごしてきた日々そのもの。彼女は今日もたくさんの人に見守られながら、自分の手で、この瞬間を謳歌しています。

PROFILE PROFILE

東本 憲子ひがしもと・のりこ

  • 1983年生まれ
  • 大阪府在住

職員のうっかりミスで図らずも始まったこのエアキャップの作品。当初はこんなに続くとは思わなかったけれど、憲子さんの代表作になり、職員の失態もなんとなく許されている昨今に感謝しかない。今や日本各地、タイまでと様々な場所へ展示され、一度見たら忘れられない作品。同じように描く人を探したものの、こんなに幾何学模様を永遠に描いていける作家にはまだお目にかかっていない。幾何学模様ではあるけれど、この中にはセーラームーンや、クリスマスツリーや、桜など、家族で遊びに行った風景や、自分の好きなもので構成されている。現在は、幅がハーフサイズの3ロール目を制作中で、そろそろ完成間近。次のロールは通常サイズで120cm巾×42m。まだ開封していないエアキャップのロールに抱きついて満面笑顔の憲子さん。描きたい風景がまだまだあるようで羨ましい。指先からあふれ出る表現の一つひとつを美術部の時間は短いけれど、見逃したくない。(社会福祉法人ノーマライゼーション協会 西淡路希望の家 金武啓子)

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