雑踏展

  • 湯泉 佐智子
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  • Sachiko YUIZUMI
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  • 《わたし》 2025年╱393mm×545mm╱紙、水性ペン

  • 《わたし》 制作年不詳╱390mm×540mm╱紙、水性ペン、クレヨン

  • 《わたし》 制作年不詳╱390mm×540mm╱紙、クレヨン

まっすぐに

山梨県山梨市牧丘町の『そだち園』で暮らす湯泉佐智子さんは、心の中にある気持ちを、そのまま届ける人。嬉しければ喜びを全身で伝え、褒められたいときはまっすぐな眼差しを向ける。またお気に入りのスタッフさんを見かければ、ペンを手にしていても心ここにあらずになってしまうことも…。でも、描き上げた絵を抱えて小走りに近づき、ふっと恥ずかしそうな笑顔で差し出す姿は、まるで恋する乙女のようです。

「とても可愛らしい人ですよ。2人の弟さんがいるので、面倒見のよいお姉さん肌な一面もあるんです」

「こっちへおいで!」と声掛けする佐智子さん。明るさと面倒見の良さが周囲を笑顔にする

「こっちにおいで!」と、ちょっぴり強引に手招きをする彼女に笑顔で応えるのは、支援員の渡邉清野さん。22年にわたって佐智子さんの暮らしを見守り、アート活動のサポートもしてきました。

そんな明るく天真爛漫な佐智子さんですが、机に向かいペンを握ると、すっかり静まります。色鉛筆、クレヨン、マジック、水彩など、様々な画材で描かれる彼女の世界。迷いなく線が走り出し、人の顔のようなテクスチャがいくつか描き込まれると、その隙間は“ある文字”で埋め尽くされていきます。

絵が完成すると、お気に入りのスタッフさんのもとへお披露目に行くのが彼女の楽しみ

「この“す”は、大好きな弟さんの名前からとった一文字なんです」。渡邉さんに見守られながら描かれていく文字や人の表情の一つひとつには、揺れ動く刹那の感情が表れているよう。その集中力はすさまじく、彼女なりの完成を迎えるまでペンが止まることはありません。

テクスチャが描かれた後には、決まって「す」の文字が隙間にいくつも書き込まれていく

満足するまで描き終えると、真剣な眼差しをふっと緩ませ、照れくさそうに作品を見せてくれる佐智子さん。その笑顔を見ていると、ついついこちらまで嬉しくなってしまいます。壁に飾られた自分の絵をきらきらした目で眺める横顔も印象的でした。

「彼女の絵をたくさんの方に見ていただけると思うと、今まで一緒に活動してきてよかったなと思います。本人も喜んでいると思いますよ」

彼女の表情の変化や仕草から想いを読み解く支援員の渡邉さん。二人の信頼関係がうかがい知れる

真剣に話す渡邉さんの隣で、ころころと興味の矛先を転がす佐智子さん。それでもきっと、互いの想いは感じ合っているのでしょう。うんうんと頷くように微笑んでいるのが印象的でした。

今頃はどんな表情で、どんな想いを描いているのでしょう。別れ際にきつく抱きしめてくれたこと。車が見えなくなるまで、大きな声で見送ってくれたこと。そうした佐智子さんの温かくてまっすぐな姿が、今も忘れられません。

PROFILE PROFILE

湯泉 佐智子ゆいずみ・さちこ

  • 1973年生まれ
  • 山梨県在住

「ねえ。これ見て。」絵を描いた紙を満面の笑みを浮かべながら持ってくる。「すごーい! いいの描けたね!」と言われたらもう、嬉しくて仕方ない。描くことは生活の一部。「描きたいの。」ペンを持つようなジェスチャーをすれば画材が欲しいサイン。手に持つと自然に動いていくクレヨンの軌跡は彼女の心の中を映し出し表現している。思いのままに描く。これは彼女が生き生きと生きるためには必要不可欠のものだ。言葉は無いが彼女にとってみれば感情を表現できるツール。こんな素敵な絵。彼女の心の中が少し見えたみたいだ。額に入れて飾れば「みんな見てみて!!」職員の手を引く。「ほらすごいでしょ。」と言わんばかりの笑顔。そんな彼女の日常を支えていきたい。(社会福祉法人そだち会 障害者支援施設そだち園 渡邉清野)

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