雑踏展

  • 深沢 重裕
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  • Shigehiro FUKASAWA
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  • 《無題》 制作年不詳╱273mm×392mm╱紙、ボールペン、水性ペン、色鉛筆

  • 《くわがた》 2011年╱270mm×380mm╱紙、ボールペン

  • 《大きな人》 2011年╱390mm×543mm╱紙、ボールペン、色鉛筆

見つめているもの

富士川町の急な坂道を登った先。深緑の木々に囲まれた『くにみ園』の一室には、カリカリカリカリとペン先が紙をなぞる音が静かに響きます。右手にペンを持ち、少し上目遣いのまま一点をじっと見つめているのが、深沢重裕さん。

左半身に麻痺があるため、描くのは右手だけ。でもその手から生まれる線は、ためらいがなく、確かな意志を感じさせます。描かれるのはサメや恐竜、人の顔のような形。重なる細い線は、空間を埋め尽くすように画面に広がっていきます。

支援員の細谷さんに温かく見守られながら、言葉数少なく黙々と作品は描かれていく

赤、青、緑などの色彩が使い分けられ、鮮やかさと深い茂みの中のような混カオス沌が同居する彼の作品。「まずメインとなるテクスチャを描いてから、隙間に線を描き込んでいくことが多いですね」と、20 年来彼を見守ってきた支援員の細谷晋一さんは話します。ペンを手に取った瞬間から自分の世界へ没入していくその集中力はすさまじく、周囲の声も耳に入らないこともあるのだそう。静かに深沢さんが見つめる先を目で追いかけながら、時折そっと手を差し伸べる姿が印象的でした。

ボールペン、色鉛筆、マーカー、水彩など、使われる画材は作品ごとに異なるのだそう

絵を描き始めたきっかけは、入所当初から月に数回行われていた美術活動でした。主体的に独自の作品を描いている様子を見て、細谷さんたちも少しずつ制作に促していったのだといいます。 「作品を通して、こうした彼らの暮らしを知ってもらえたら嬉しいです。日常の中でこういった驚くようなものが作られるのですが、その営み自体は健常者の日々の積み重ねとそれほど変わらない。むしろ変わらないスタイルで自分の世界を描き続けていく姿に、尊敬の念を感じますよね」。

一見寡黙だが、好きなロボットアニメなどの話をする時はお茶目な一面を見せることも

言葉は少なく、少し恥ずかしがりな様子の深沢さん。ちょっとぶっきらぼうにも見えるけど、時に周囲の人を気遣う優しい一面もあるのだと細谷さんは教えてくれました。妊娠中の職員さんに向けて、「大事にしろし(身体をお大事に)」と声をかける一幕もあったのだそう。ドライブの車内で一緒に替え歌を歌って大笑いをした思い出も、なんだか深沢さんの温かい人柄と、二人の関係性が見えてくるエピソードです。

「優しいんですよね。これ描いているのは、もしかしてぼくですか?」。細谷さんの言葉は耳に届いているはずなのに、黙々と視線を離さず線を描き続ける無口な彼。でもよく見ると…口元が少しはにかんではいませんか?

作品制作やパズルをする時以外は、お気に入りの定位置で静かに作業をするのが日課

「ただの、おじさんだよ」なんて細谷さんのこと言ってますけど…。きっと大切な存在なんですよね。またカリカリカリカリ描き始めちゃいましたけど。

PROFILE PROFILE

深沢 重裕ふかさわ・しげひろ

  • 1985年生まれ
  • 山梨県在住

深沢重裕さんは今年で40歳になる。特別支援学校の実習でくにみ園にやってきたのがぼくとの関わりの始まり。そのときにクワガタムシの話でぼくらは心を通わせる事ができたんだっけ。だからもう随分長い付き合いになる。重裕さんが絵を描く事にどんなふうに向き合っていったのか、今となってはよく思い出せないことも多いのだけれど、絵の放つ雰囲気は今も昔も変わらない。もちろん褒め言葉としてのこと。だけれども、さまざまな人との関わりがあって、今でも変化を続けている。誰かが新しい何かをもたらしても、それはいつの間にか自然に溶け込んでいって彼のフレーヴァーとなっている。こうやって、変わらずに日々の中に新しい驚きをもたらしてくれている。あれほど懲りずに繰り返されるペン先のストロークには迷いは感じられないし、その圧倒的な密度と破綻のないシェイプにぼくらは釘付けになる。でもこれは今に始まったことじゃない。みんなこの絵を見て。何かに気がついたほうがいいって、絶対!!(社会福祉法人くにみ会くにみ園 細谷晋一)

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出展作家